今年の流行語大賞がこれから選定されるならば、「三苫の1ミリ」が選ばれる
であろう。世界中が騒然となるほどの際どい判定であったが、勝利の女神は日
本チームに味方してくれた。角度によってはゴールラインを割っているように
も見えたが、VARによりインプレーが認められ、三苫のクロスを押し込んだ
田中碧のゴールが確定し、これが決勝点となった。続ドーハの歓喜だが、サッ
カー強国のドイツとスペインを破り首位で「死のグループ」を突破したのだか
ら、「ドーハの奇跡」と言うべきだろう。5BKで守備的に入ったにもかかわ
らず、早々にあっさり先制点を許してしまったが、ドイツ戦と同じく前半を1
失点で切り抜けたのが大きかった。堂安と三苫の投入で流れが変わり、後半早
々に堂安の目の覚めるような1発で同点に追いついた。ドイツ戦の同点ゴール
は三苫と南野で作ったチャンスに決めた、「ごっそさん」ゴールの観があった
が、この試合のゴールにより堂安の実力を再認識した。ゴールに至るまでのチ
ームプレーも素晴らしかった。左サイドから三苫や前田が相手GKにプレスを
掛け、たまらずに蹴り出したボールを、前半は右サイドで守備に追わていた伊
東が飛び出して競り勝ち、堂安につなぎ同点弾に結びついた。余韻の残る中、
数分後に飛び出したのが「三苫の1ミル」からの碧の勝越し弾であった。後半
途中から起用された冨安は本職の右SBの位置で安定感をみせ、終盤には遠藤
も投入されて逃げ切り、決勝トーナメントへの切符を手にした。E組のもう一
方のドイツ対コスタリカ戦の途中経過に動きがある度に、「このまま終わった
ら」の順位がころころ変わる展開はスリリングであった。日本が勝ち越した後
に、コスタリカも勝越して、その時点ではドイツとスペインが予選リーグ敗退
と云う大波乱含みの展開であった。最後はドイツが4-2でリードとの情報が
入り、日本は首位通過か予選落ちかどちらかの展開となっただけに、終了の笛
とともにサポーターとしても涙が零れるほど嬉しかった。